その子との会話

うちは長屋風のアパートで中に入るとメゾネットになっている。建物の表側に庭があり,建物に囲まれるようにして中庭もある。それぞれの庭は鉄製の柵で囲まれているので長屋というより一戸建てのような雰囲気になる。

その一風変わった建物のせいか,入居者は外国人の家族が多い。考えてみれば私の夫も外国人である。

中庭で遊び子ども達の声や庭先でペットと戯れる大人の声が,家の中まで聞こえる。ラテン系やアジア系の外国の言葉が飛び交うのが心地よい。ラテン系の言語はアラビア語に似たところもあるので,夫などは懐かしい気分になるようだ。私にとってもアラビア語や地中海岸を思い出させてくれる響きだ。

今日は柴犬ナナの散歩に出る時,そのうちの一軒のお宅から女の子が出ていて縄跳びをしていた。以前は日本語が苦手だからと恥ずかしがっていたが,今日は彼女から話しかけてきてくれた。ずいぶん日本語が上手になっている。まだ就学前のようなので大人と違って新しい言語を吸収するスピードが速いのだろう。

「この子(ナナのこと)は男の子?女の子?」「女の子だよ。」

「名前は何?」「ナナだよ。」

「茶色と白ね,かわいいね。」「そうかわいいよ。」

「猫もいるね。」「猫もいるよ。」「中にいるの?」「中にいるよ。一緒だよ。」

日本人が初めて習う外国語のような会話だったけれど,恥ずかしがって大人の影に隠れることが多かった子が,こんなに積極的に(でもはにかんだような表情も少し見せつつ)話しかけてきてくれたことが嬉しかった。

今日も暑い日だったので,予定では散歩はもう少し遅い時間帯のはずだったのだけれど,ナナが「散歩に行こう」とグイグイきたので早めに外に出た。だからあの女の子に会えたので,ナナは彼女が庭に出てきたのがわかったから会いたかったのかなと思う。

彼女はこれからどんな言葉を覚えていくのだろう。どんな人に出会って話をしていくのだろう。

私が住む地域は割と外国人が多いので,場所によってはいくつもの言語が入り混じって聞こえるようなことは度々ある。全部の言語を覚えていくのは無理だと思う。でも誰かと話をしてみようという気持ちになれたら,それはすごいことだ。

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