Googleにのこる母と家

雨が続くと不安になる。昔はここまでではなかったが,冷夏と夏の長雨はイネや農作物が育たないので嫌いだった。誰だって好きではないと思うが。

雨がこんなに不安なのは2年前に台風で実家がなくなってしまったから。厳密に言えば半壊して1階部分と土台がダメになったので,解体して更地にした。同じ敷地内に姉が建てた離れがあるが,それ以外の2棟の木造物置や古い車庫は家と一緒に解体してもらった。

隠れる場所がなくなって,実家を拠点にしていた野良猫がいなくなってしまったのが悲しい。一番悲しいことはそれ。

台風被災時に母は闘病中で病院にいたのだが,病院も被災してしまい診療棟,事務棟,厨房,倉庫などが大水に流されて,医薬品も米も何もかもなくなってしまった。点滴はナースステーションにあったものと援助物資で,食事は缶詰だった。母はそれまで何とかかんばって食事もしようとしていたが,モサモサする缶詰は喉に詰まり咳き込んでしまい食べられなくなった。

それから2ヶ月ほどして母が亡くなった。

少し前にGoogleマップで実家近辺を調べてみた。ストリートビューには今でも実家の建物がある。それどころか,今まさに外出しようと車を運転して道路に出ようする母の姿がぼかしてはあるが写っていた。

何年前の写真か知らないが,実家近辺は田舎なので都会のように変化が激しくないから,ずっと同じ写真なのだろう。

子どもの頃から大好きだった庭の木々が花を咲かせていたので,曇っていたが春なのだろうということがわかる。

母は亡くなる10ヶ月ぐらい前は元気だったし,亡くなる前の年に高齢者講習と検査も受けて免許を更新していた。さすがに周りに迷惑だからと遠出することはなく列車やタクシーを使ったが,数キロ先まで自家用車で買い物に行くぐらいはできていた。

母が体調を崩した時も,春だというのに曇りや雨が続き(春だからかもしれないが),初夏になってもずっと雨や曇りでジメついていた時だった。様子を見に行く時いつも雨だったような気がする。

ずっと続く雨は人間の気力や体力まで奪ってしまう。一つには太陽に当たらないと脳内の情報伝達物質であるセロトニンが分泌されないからだが,それだけではないだろう。

入院させずに家で見ることができると良かったが,当時は仕事をしていたので,ずっと母のそばにいることはできなかったし,何より私と母はいまひとつ相性が悪かった。なんというか,嫌いというのではないのだが,長く一緒にいるとお互いにイライラしてしまうので体調も崩していた。だから家を離れた。アパートを借りて引っ越して,その後結婚と転勤があってさらに遠くへと移り住んだ。

何もかもなくなってしまったはずの実家が,Googleマップの中にはまだある。母もいる。不思議なものである。

スクリーンショットを撮って保存することにした。

今日はまだワクチン接種の副反応のせいか熱っぽいし体調が悪い。気持ちも沈む。早く晴れてほしい。セロトニン全開にしたい。

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